2008年10月30日

『鉄人28号』原作完全版@ 横山光輝(潮出版社)/2005年


鉄人28号 原作完全版 (1)
著者名:横山光輝
出版社:潮出版社
出版年:2008.10
ISBN :EB60020785


たまたまTVのBSをつけたら、劇場映画版『鉄人28号 白昼の残月』(今川泰宏監督)がはじまるところだった。
昨年、テレビ東京で『鉄人28号』をやっているのは、これもたまたま見かけることがあった。
『鉄人28号』は、小学生の頃、最も好きだったアニメ。当時、手塚治虫の『鉄腕アトム』と人気を二分していた。鉄人とアトム、どっちが強いかで、けんかまでしていた子もいた。僕は、鉄人派だった。
それでも、これといってリメイクには興味がなかった。
だが、『鉄人28号 白昼の残月』は、最初から衝撃的だった。
現在、昭和30年代ブームといわれる。それは、戦後の焼け野原から立ち直り、高度成長期へと向かうロマンチックな風景で成立している。
だが、それは本当の姿だろうか。
ほとんどの人間が戦争にかかわり、なかにはアジア諸国で残虐な行為をしていた者もたくさんいただろう。そして、一方では戦争の亡霊がうごめきはじめていた。
昭和30年代のレトロブームは、完全に被害者の物語を土台にして成立している。
加害者としての物語は、見事に隠されている。
だが、この映画に描かれている昭和30年代は、まったく違う。
僕の記憶では、あくまで鉄人は悪者どものつくったロボットと戦う正義の味方だった。
だが、この映画では、鉄人は前大戦の日本の最終兵器として開発されたものであり、そして他の登場人物たちも何らかの戦争の傷を背負っている。
実際、前大戦末期、日本は一発逆転の兵器をもっているという噂が流れていた。その証言を何人もの人から聞いた。
どこまでが原作通りなのか、確認するために本書を購入した。
原作でも、鉄人は前大戦の最終兵器として開発されていた。
映画では、原作と違って大きく物語をつくっているが、もしかしたら原作者の横山光輝の戦争への思いを最も反映しているのかもしれない。
あっというまに、今川泰宏監督のファンになってしまった。
音楽を担当したのは、伊福部昭。
ゴジラのテーマ曲で有名な伊福部さんだが、鉄人で使われた曲がまたいい。
もともとは、アイヌのリズムで書かれた曲。
今一度、この昭和30年代ブーム、そしてこの国の戦前、戦中、戦後を見なおすいい機会かもしれない。

手元にある鉄人28号関係の書籍は下記の通り。
* 『鉄人28号』原作完全版A(潮出版)2005年
posted by NIHEI at 22:28| Comment(0) | TrackBack(0) | 漫画/アジア

2008年05月01日

『のらくろ漫画集(1)〜(3)』少年倶楽部文庫 田河水泡(講談社)/1975年3刷


『のらくろ漫画集(1)〜(3)』少年倶楽部文庫
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著者名:田河水泡
出版社:講談社
出版年:1975


『のらくろ』は、昭和6年から16年までの約11年間、「少年倶楽部」に連載された、日本の漫画の礎をつくった超人気漫画。
いまと違って兵隊たちが街を跋扈する昭和初期に、11年もの連載は驚異的である。
それでも、『のらくろ』の存在は知っていても、実際に読むということはなかった。(残念ながら、いま『のらくろ』は絶版になっているのではないだろうか)
読むきっかけは、乞食(ホイト)芸の黒田オサムさんから、当時のことを聞いたことによる。
戦争の足音が聞こえ、物資も不足しはじめても、「少年倶楽部」の紙の質も量も変わらなかったという。それほど飛びぬけて売れていた。
黒田さんの話によると、あまり知られていないが田河水泡は現代美術を描いていたという。そのせいか、コマ割りなど、実験的でモダンだ。黒田さんも、今ではめずらしくないが、のらくろが走る後ろに、ポッ、ポッ、ポッという動きの絵が描かれているのを見て、とても驚いたと言っていた。
田河水泡は、何度も当局に呼ばれたそうだが、日本全国の子どもたちの圧倒的な人気によって、危険な目にあうことはなかったという。逆にそこでもサインを求められたりもした。
だが、昭和16年内務省の役人から「この戦時中に漫画などというふざけたものは掲載を許さん」と言われ、打ち切りとなった。
(内務省の役人とは、誰だったのだろう。この国では、そういうことは解き明かされない)
のらくろは、その最終回で「深い考えがあって、軍隊をやめる」と言う。このとき、田河水泡の胸にはどんな思いが去来していたのだろうか。
本書は、傑作選を3巻にまとめたもの。
いま読んでも、のらくろというキャラクターは、なんとも不思議な魅力にあふれている。
それでも、兵隊ものの漫画が人気を得る時代は、やはり悲しむべきものがある。
posted by NIHEI at 14:29| Comment(0) | TrackBack(0) | 漫画/アジア

2006年08月21日

手塚治虫漫画全集『どろろ@ABC』(講談社)/1981年


どろろ 1


著者名:手塚治虫(著)
出版社:講談社
出版年:1981.03
ISBN :4061087479


かつて手塚治虫論を書こうとしたことがある。それも、宮沢賢治との比較により進めようと考えた。
宮沢賢治の極めて特異な「性」を扱った作品を見つけた。ふとのぞかせてしまったつぶやきのようなその小品のなかに、僕は賢治の隠れた本質を見出した。
同じように手塚治虫の作品のなかにもそれを見つけようとした。そのためにかなりの作品を読んだのだが、何も見出すことはできなかった。せいぜい「エロスとは、メタモルフォーゼ」という言葉を見出すぐらいだった。
そういったなかで、この『どろろ』は何かを垣間見せてくれるのではないかと期待した一書だった。
だが、残念ながら様々な都合で、突然終わってしまっている。どろろはなぜ女でなければならなかったのか。気になるところだ。
あとがきを読んでも、水木しげるに代表される妖怪ブームに対抗しようとして書きはじめられたせいか、あまり手塚治虫自身の愛着を感じられない。残念だ。
posted by NIHEI at 12:30| Comment(0) | TrackBack(3) | 漫画/アジア

2005年12月11日

『はだしのゲンはピカドンを忘れない』岩波ブックレットNO.7 中沢啓治(岩波書店)/1982年


はだしのゲンはピカドンを忘れない



著者名:中沢啓治
出版社:岩波書店
出版年:1982.07
ISBN :400004947X


『はだしのゲン』原作者、中沢啓治さんの自伝的エッセイ。
中沢さんの実体験がいかに『はだしのゲン』に反映されているかがよくわかり、『はだしのゲン』をよりリアルに感じられる。
もちろん、中沢さんの平和への意志が直接伝わってくる。
posted by NIHEI at 23:44| Comment(0) | TrackBack(0) | 漫画/アジア

2005年12月09日

『はだしのゲン』全7巻 中沢啓治(中公文庫) /2004年


はだしのゲン 1



著者名:中沢啓治
出版社:中央公論新社
出版年:1998.05
ISBN :4122031567


実は、『はだしのゲン』は読んだことがなかった。
たいていの人が、子どもの頃、学校で読んだとか、必ず体験がある。
でも、僕にはそういった記憶がまったくない。これに限らず、僕の幼少期の記憶はすべて別次元の世界、まるで物質的な夢の世界に住んでいたようなのだが。
2005年8月6日に広島にいたこともあり、この機会に読んでみた。
作者中沢啓治氏の強烈な意志に圧倒される。
原爆の被害の実態は勿論のこと、被爆者への差別の問題、強制連行された朝鮮の人たちの問題、天皇の戦争責任、広島市の行政差別、アメリカの核開発への批判、ひいては女性の戦争責任まで言及している。
それを、成長していくゲンというひとりの少年の眼差しを通して描くことの誠実さに驚かされるのだが、やはり僕はひとりの漫画家中沢啓治の意志の強さに圧倒される。


Ohta Naoホームページ : http://www.geocities.jp/ot_nao/
posted by NIHEI at 23:39| Comment(3) | TrackBack(1) | 漫画/アジア
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