| 磔のロシア |
 | 著者名:亀山郁夫(著) 出版社:岩波書店 出版年:2002.05 ISBN :9784000244107 |
亀山さんは、もともとドストエフスキーを専攻していた。
だが、すぐれた先人たちによってドストエフスキー研究に入れる余地がなかったという。
そこで、ロシアであまり手をつけられていないロシア・アヴァンギャルド、特にフレーブニコフの研究に入る。
その後、マヤコフスキーやマレーヴィチなど、ロシア・アヴァンギャルドの研究に入ってゆくなかで、スターリンと芸術家というテーマを発見する。
これを「スターリン学」とよんだ。
その集大成が本書であり、大仏次郎賞を受賞している。
このテーマは非常に興味深い。
だが、危うい部分も或る。
このテーマで書かれた次の『熱狂とユーフォリア』、そして『大審問官スターリン』で遂にその危うさが露呈する。
その危うさは、スターリン自身を主人公として描きたいという誘惑に抗しきれないところに、よくあらわれている。
この危険なロマンチシズムを、亀山さん自身よく自覚している。
そのことは、最新刊の佐藤優氏との対談『ロシア 闇と魂の国家』(文春新書2008年)の序文に、激しく書いている。
それでも、このテーマは重要である。
多くの貴重な示唆に富んでいる。
実際に、亀山さんとは二度ほどお会いしてお話をうかがった。
とてもナイーブな人だった。そのナイーブさは先にも触れた危うさも感じさせるのだが、開かれているために不思議なバランスも感じた。
それは、本書の冒頭にもよくあらわれている。
1930年代のスターリンの大テロル時代と9.11に象徴される現在のテロとの比較。
それ以外にも、あまり紹介されない多くのロシアの芸術家を知ることができるのも貴重である。
僕が亀山さんから教えてもらって今最も興味をもっているのは、詩人のフレーブニコフ、画家のブルーベリとフィローノフ、音楽家のメトネル、そして思想家のフョードロフ。
亀山さんはいま待望のドストエフスキーの世界に戻られ、新訳の『カラマーゾフの兄弟』が大ベストセラーになっている。
手元にある亀山さんの著作は、下記のとおり。
* 『熱狂とユーフォリア』(平凡社)2003年
* 『大審問官スターリン』(小学館)2006年
* 『終末と革命のロシア・ルネサンス』(岩波書店)1993年
* 『ロシア・アヴァンギャルド』(岩波新書)1996年
* 『ロシア 闇と魂の国家』(岩波新書)2008年
* 『NHK知るを楽しむ 悲劇のロシア ドストエフスキーからショスタコーヴィチへ』(日本放送出版協会)2008年