2008年01月26日

『ながいながいペンギンの話』いぬいとみこ作 山田三郎絵(理論社)/1995年153刷


ながいながいペンギンの話
178.jpg著者名:いぬいとみこ(著)
出版社:理論社
出版年:1967.01
ISBN :9784652001028


名前だけを知っていて、いぬいとみこさんの本を読むのは、はじめてのことである。
どうも僕はペンギンものに弱いらしい。
この本も、ペンギンにつられて読んだ。
ペンギンのルルとキキが生まれてから1年間の物語。
まず驚かされたのは、いぬいさんのその文章のうまさ、上品さだった。
いまこれほどの文章を書ける作家がいるだろうか。
この謙虚な上品さが、子どもたちに長く読み継がれている大きな要因だと感ずる。
この作品が最初に発表されたのが1953年。
南極のことも、そこに住むペンギンのことも、当時はよくわかっていなかった。
いぬいさんは、「ナショナル・ジォグラフィック・マガジン」に掲載されたペンギンの写真を見て、この物語を書きはじめたという。
よくわかっていなかったにもかかわらず、ペンギンの生態が正確に描かれている。
なんという想像力だろう。
この本のタイトル『ながいながいペンギンの話』は、カレル・チャペックの『長い長いお医者さんの話』からきているという。
なんとなく、それもうれしい。

2008年01月23日

『小さな島の大男』ヴァルター・クライエぶん トメク・ボガッキーえ斉藤洋 訳(ほるぷ出版)/1992年


小さな島の大男
177.jpg著者名:ヴァルター・クライエ(著)
     トメク・ボガッキー(画)
     斉藤洋(訳)
出版社:ほるぷ出版
出版年:1992.05
ISBN :9784593502875


文章のヴァルター・クライエは、ドイツ出身。
絵のトメク・ボガッキーは、ポーランド出身。
大男が、ひとりぽっちで小さな島に住んでいる。
大好きな小さな島に。
孤独ではなく、充足している。
だが、嵐によって大男は島を出なければならなくなる。
これまた小さな船に乗って海に出る。
こういった設定に、僕などはすぐにやられてしまう。
絵も、淡いが大胆でいい。

2008年01月21日

『夢を追いかけろ クリストファー・コロンブスの物語』ピーター・シス 吉田悟郎 訳(ほるぷ出版)/1994年4刷


夢を追いかけろ
176.jpg著者名:ピーター・シス(著)
     吉田悟郎(訳)
出版社:ほるぷ出版
出版年:1992.04
ISBN :9784593502868


ピーター・シスは、チェコスロヴァキア出身。
ピーター・シスをはじめて知ったのは、2006年に目黒区立美術館で開催された「チェコと絵本とアニメーションの世界」であった。
目当ては、もちろんヨゼフ・チャペックであったが、他にもたくさん興味深い作家の作品が並んでいた。
そのなかでも、ピーター・シスの作品はひときわ異彩を放っていた。
パラノイア的、あるいは空白恐怖症のように隅々まで細かく描きこまれたその絵をみていると、どれほどの時間をかけて描いているのか、めまいさえ覚える思いだった。
当然、アートとしてのクオリティも高い。
このコロンブスを描いた『夢を追いかけろ』も、まず石膏で何度も塗り重ねた上に、油彩などで描いている。
まるで小宇宙をつくっているようだ。

[追記]2008年5月30日(金)
* 『マドレンカ』松田素子訳(BL出版)2001年
ピーター・シスの世界観、宇宙観は、どこからきているのだろうか。まるでルネッサンス期の人のようだ。世界は狭くなったといわれて久しいが、果たしてそうだろうか。私たちの想像力が貧困になっただけではないのか。そんなことをピーター・シスの絵本は思わせてくれる。

2008年01月19日

『BORKA ボルカ』ジョン・バーニンガム さく きじまはじめ やく(ほるぷ出版)/2005年12刷


ボルカ
175.jpg著者名:ジョン・バーニンガム(著)
     木島始(訳)
出版社:ほるぷ出版
出版年:1993.11
ISBN :9784593503070


ジョン・バーニンガムも、イギリスの人気絵本作家。
この『ボルカ』は、バーニンガムのデビュー作。
このデビュー作で、いきなりケイト・グリーナウェイ賞を受賞している。
ハーニンガムの筆致は、大胆だ。
その大胆な筆致が、動物や人間の本質を如実にあらわしている。

ジョン・バーニンガムの手元にある作品は、下記の通り。
*『ハーキン 谷へおりた きつね』やく あきのしょういちろう(童話館出版)2006年第4刷

ハーキン
著者名:ジョン・バーニンガム(著)
     秋野翔一郎(訳)
出版社:童話館出版
出版年:2003.05
ISBN :9784887500464

[追記]2008年5月30日(金)
* 『はたらくうまのハンバートとロンドン市長さんのはなし』じんぐうてるお訳(童話館出版)2004年6刷
やはり、ジョン・バーニンガムは、画と構成がすばらしい。

[追記]2008年6月10日(火)
* 『おじいちゃん』たにかわしゅんたろう やく(ほるぷ出版)2004年第32刷
他の作品と違ってソフトなタッチで描かれている。作品が進むたびに、思わずため息が出てしまう。すばらしい。
* 『いつもちこくのおとこのこージョン・パトリック・ノーマン・マクヘネシー』たにかわしゅんたろう やく(あかね書房)1999年第22刷
奇想天外な発想のもと、ユーモアたっぷりの痛快物語。だれでもこんなことは一度は想像したのではないだろうか。バーニンガムは、やはり絵がいい。

2008年01月17日

『きれいな絵なんかなかった』アニタ・ローベル 小島希里 訳(ポプラ社)/2006年第4刷


きれいな絵なんかなかった
174.jpg著者名:アニタ・ローベル(著)
     小島希里(訳)
出版社:ポプラ社
出版年:2002.11
ISBN :9784591074237


人気絵本作家アニタ・ローベルの少女時代の回想録。
ポーランドのユダヤ人であったアニタは、強制収容所に送られる。
誰しもが知っているナチスの強制収容所の過酷さ。
だが、アニタはそれらの体験を、悲惨さを強調するのではなく、明るく強く生きた少女として描く。
むしろ、解放されてからの心に残った傷の方が、胸をしめつけられる。
ところどころ謎な部分が残るのだが、それは最終章で感動的に明かされる。
アニタは、ここでもとりあげたアメリカの人気絵本作家アーノルド・ローベルの妻でもある。

この本は、翻訳者の小島希里さんから直接いただいた。
希里さんは、翻訳業とは別に、障害者と健常者(何ともイヤな言葉と区分けだが)が交流する場「がやがや」をつくっている。
そこでは、歌やダンスなど、様々な創造的な遊びが繰り広げられる。
時に、コンサートを開いたりする。
希里さんは、生きていること、人と交流することに謙虚にならざるを得ない仕事をなさっている。
僕もときどき風間さんや小林君に会いたくなると「がやがや」に参加している。

アニタ・ローベルの手元にある作品は、下記の通り。
*『ちいさな 木ぼりのおひゃくしょうさん』えアニタ・ローベル ぶんアリス・ダルグリーシュ やく星川菜津代(童話館出版)1994年

ちいさな木ぼりのおひゃくしょうさん
著者名:アリス・ダルグリーシュ(著)
     アニタ・ローベル(画)
     星川菜津代(訳)
出版社:童話館出版
出版年:1995.01
ISBN :9784924938243

道草1

「フラスコの宇宙」では、同じ著者のものは、新しく紹介するのではなく、追記という形で同じページを更新していますので、気になる作家などは何度も訪れてみてください。
posted by NIHEI at 14:02| Comment(0) | TrackBack(0) | 道草

2008年01月16日

『かいじゅうたちのいるところ』モーリス・センダックさく じんぐうてるおやく(冨山房)/2003年87刷


かいじゅうたちのいるところ
著者名:モーリス・センダック(著)
     じんぐうてるお(訳)
出版社:冨山房
出版年:1975.01
ISBN :9784572002150


モーリス・センダックも、アメリカの人気絵本作家。
子どもの想像力を、強くまっすぐ刺激する。
それでも、ただ大人の思う子どものイメージを押しつけるわけではない。
『ロージーちゃんのひみつ』でもみられるように、その想像力は多面的で、まるでひだのように見え隠れする。
それは、ときに死の影をももった傷であったりする。
それをセンダックは、強くまっすぐな想像力のなかで明るく描いている。

モーリス・センダックの手元にある作品は、下記の通り。
*『ロージーちゃんのひみつ』なかむらたえこやく(偕成社)2001年9刷

ロージーちゃんのひみつ 改訂版
著者名:モーリス・センダック(著)
     中村妙子(訳)
出版社:偕成社
出版年:1983.01
ISBN :9784034310809

2008年01月15日

『聖−歌章』稲川方人(思潮社)/2007年


聖−歌章
172.jpg 著者名:稲川方人(著)
出版社:思潮社
出版年:2007.10
ISBN :9784783730286


危機に瀕した現在の世界は、困難である。
その困難な世界にいて、詩を書くこともまた、困難である。
そのなかで、世界と正確な距離を保ちながら対峙しつづける詩人の存在、それもまた困難である。
近代以降、あるいは人間が近代を意識して以降、あるいはアウシュヴィッツ、南京、広島・長崎以降、あるいは冷戦構造崩壊以降、あるいは9.11以降、その困難さは後戻りできないだけに複雑さを増すばかりである。
近代以降の困難な世界のなかで、この一冊の詩集『聖−歌章』は、ひとつの金字塔といえるだろう。
「9.11以降、ますます詩の役割は大きくなった」
「詩を書くのは、世界と対峙するため」
これらの強い言葉は、実際に稲川方人さんの口から聞いた言葉である。
パレスチナの詩人ダルウィーシュと、互いに遠く離れた場所にいるが、たしかにこの困難な世界を通じて、ふたりはつながっている。
そのようなつながりのなかで、世界は新たな様相を示してくるだろう。
そして、改めてジャン・リュック・ゴダールの『ベトナムから遠く離れて』を思い出したりもする。

ここ数年、稲川さんとは「歌唱ライブ」という新たなジャンルで仕事を一緒にしている。
現代詩と身体的な声を、音楽で結ぶ実験といえる。
稲川さんをはじめ、瀬尾育生さん、倉田比羽子さん、守中高明さん、伊藤悠子さんの現代詩に、僕が曲をつけ、パフォーマーの祥子-SHOKOが歌う。
多少、歌のために変更されてはいるが、この『聖−歌章』におさめられた2編の詩も、そのレパートリーに入っている。

手元にある稲川方人さんの著作は、下記の通り。
* 詩集『償われた者の伝記のために』(書記書林)1976年
* 詩集『封印』(思潮社)1985年
* 詩集『われらを 生かしめる者は どこか』(青土社)1986年
* 詩集『アミとわたし』(書肆山田)1988年
* 詩集『2000光年のコノテーション』(思潮社)1991年
* 詩集『君の時代の貴重な作家が死んだ君が書いた幼い詩の復習』(書肆山田)1997年
* 『稲川方人 全詩集』(思潮社)2002年
* 『彼方へのサボタージュ』(小沢書店)1987年
* 『反感装置』(思潮社)1987年
posted by NIHEI at 21:41| Comment(1) | TrackBack(0) | 詩歌/アジア
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