| 原爆詩集 | |
![]() | 著者名:峠三吉 出版社:青木文庫 出版年:1964 |
「にんげんをかえせ」と訴えかける序からはじまるこの詩集は、原爆を語る上で欠かせない一冊である。
だが、考えてしまう。
当事者とそうでない者との違い。
それは、簡単に言ってしまえば、「直接性」と「普遍性」の問題。
当事者の証言は重要だが、表現の世界で優れたものは少ないと感じている。そこに記憶のリレーのあり方の難しさがある。単一性に流れてしまうと、表現する必要さえなくなってしまう。そこにU世以降の遅れてきた者たちの役割があるとも思っている。
例えば、原爆体験者であり、医師でもある御庄博実の『御庄博実詩集』(思潮社/現代詩文庫 2003年)にも同じことを感じる。
あるいは、張貞任の『歴史詩集従軍慰安婦 あなた朝鮮の十字架よ』(影書房 1992年)にも、強烈に感じる。啓蒙することを考えているのかもしれないが、この詩集を読むよりも実際の証言集を読むべきだと。
やはり、「直接性」と「普遍性」の問題か。もちろん、すぐれた作品ほど、このふたつをきれいに区分けすることはできないが。(例えば、パレスチナの作家、ガッサーン・カナファーニの諸作品を僕は思い浮かべる)
いずれにしても、これもまたまとまった形で考察しなければならない事柄だ。

